静岡の地元情報が集まる口コミサイト:eしずおか

静岡時代 シズオカガクセイ的新聞

特集

【特別対談】“誰もが幸せ”になる、真の介護とは?(2/2)

連続特集:「人生の必修科目。大学生のための"さきどり介護学"」(3)

人と人が向き合う“介護”。その人間同士の関係性は、外から見てわかりやすい「介護される側」「介護する側」という世界なんだろうか。介護職の人材不足だからというわけでなく、いま本当に必要な介護とは何かを考える上で、誰かに幸せを与えたり、与えられたり、またその幸せに寄り添う仕事として、介護や介護職を捉えてみたい。今後、静岡県内地域でどんな介護を私たち世代も一緒になってつくっていければいいんだろう……?

今回は静岡英和学院大学 人間社会学部コミュニティ福祉学科教授の見平隆(みひら たかし)先生(コミュニティ福祉学科・学科長も務められています)と、静岡県介護の未来ナビゲーターの野中一臣さん・小林正子さんと一緒に、大学生がいま知るべき介護のこれからの展望について伺いました。

取材・文:小泉夏葉(静岡時代編集部・静岡大学 理学部地球科学科2年) [写真右]

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

【特別対談】“誰もが幸せ”になる、真の介護とは?(2/2)

■見平隆(みひら たかし)先生 [写真中央]
静岡英和学院大学 人間社会学部コミュニティ福祉学科教授。専門分野は、地域福祉、政策、福祉社会学。
コミュニティの一員として、誰もが幸せである介護とは何なのか、先生の実体験をもとにしたお話を伺いました。

《介護の未来ナビゲーター》
■野中一臣(のなかかずおみ)さん [写真中右]
社会福祉法人・松風
特別養護老人ホーム 「みずうみ」勤務。

■小林正子(こばやしまさこ)さん [写真中左]
社会福祉法人・春風会
特別養護老人ホーム 「みはるの丘 浮島」勤務

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

■大学生世代と介護の関わりが、家族を支える肝になる

(静岡時代):お話を伺ううちに、介護職にものすごく可能性を感じるようになったのですが、たとえば働き手の立場から、これからの介護や介護職の展望で期待していることはありますか?

(小林さん):今、施設として地域に関わっていく活動に意識を向けています。介護施設って、みずから行くようなところではないじゃないですか。家族が入居していれば行くかもしれないですが、何もない人が行くようなところではない。
だから、誰でもおとずれることができるフラットな場所、地域にとってオープンな場所になったら、介護自体も身近に感じてもらえるのではないかと思います。

(見平先生):日本の老人ホームって、靴をぬぐスタイルでしょ。これって、私反対なんです。重篤な患者さんがいる病院もみんな土足ですよ。なんで老人ホームでは靴脱いで入らなければいけないんだと。それは、老人ホームがひとつの家だからという日本の感覚がありますね。一般の人たちが、自由に出入りできるかといったらできないです。だったら、施設の中に喫茶コーナーでもつくって、中からも外からも自由に行けるようにするとか。実際にそういう風につくっている施設もありますよね。

小林さんの言うように、これからは、“まちの住民として施設職員”がいる状況をつくらなければならない。お茶会などをやったとして、最初は人がこなくても、月一回でもずっと続ければ、だんだんと広がるはず。やがてそれが公園のような機能も持つでしょう。そこからまた人が来始めるんです。あとはやっぱり若い人たちが、「今の時代これですよ」ってアイデアを出して、業界や施設をどんどん変えていってほしいなあ。

(静岡時代):そういう環境、風土を育てていく時期にあるのかもしれませんね。若手職員のみなさんの腕にかかっていると。

(野中さん):僕たちは毎週毎日、ケアの仕方だけでなく、どちらかと言えば、“どうやったら笑わせられるか”に頭を悩ませてますよ。次はどんなことをしようかって。生活は生モノだから、今日やったことを来週やれるかといったら同じことはできないですし。ウケも良いときや鈍いときがありますし。そう考えると、本当に創造性高くておもしろいんですけどね。

あとはこの頭の使い方を、もっと仕事自体が面白くなるように、自分たちに向けても活かさないとって思います。単純ですけど、やっぱり面白いと思われる仕事には人は集まりますし。どこまで介護そのものを面白くするのかが、僕たちの勝負だと思っています。

(見平先生):だから吉本新喜劇でないけども、計算された笑いは緻密なものですよ。施設にはいった瞬間から職員の方はパフォーマンスが始まっていると考えてもいいくらいです。すると確かに疲れはするけど、心地よい疲れだと思います。3Kとかも、義務感でやるからキツく感じるし、排泄物はきれいにすれば済む話。給料も、決して安い訳ではない。日本の平均的な賃金からいけば、介護職の給料は決して悪くなくて、ある程度の水準なんです。

高額所得者をとびぬけて問題視させないように操作するからね。これから、介護の施設のありかたももっと変わっていきます。そうしたら、今の民間企業でも会社が自分の社員を独立させて一緒にやるというスタイルもあるでしょ?それを、介護の世界でもできるようにしていこうというのが、20年前に考えられたことなんですよ。だからチャンスや可能性を広げていくことができる職場なんです。

それを逆にマスコミが、人手が足りないとか、悪いイメージを植え付けてる気がします。自分にふさわしい仕事があるのではないかと皆思いますよね。それはそうなんですが、でも自分にふさわしい仕事は何かというときに、じゃあ自分は何したいのよ。誰かが、何かが提示するのをまっているのという。結局、カタログ・マニュアル人間なんです。自分がつくる楽しさを感じれば、全然違う。作る楽しさをしると、見方が変わってくる。だから何かいいものないか、何が私にあっているのかを探している人は、ずっとそればかりにとらわれてしまう。自分が人生をつくる楽しさを今の若い人たちに考えてほしい。どん欲さが大事だと思います。これをやるともっと変わるのではないか。介護の世界に限らずね。だから仕事で伸びるんですよね。

(野中さん):僕もこの仕事をはじめてから10年しかたっていないですが。やはり、楽しい仕事をやって、今33歳なんですが、ちゃんと結婚できて子どももいて、親の援助もうけずに一戸建てを買って暮らしています。車もあるし、ちゃんとした収入ってあるんですよね、介護の現場でも。自分たちで楽しい仕事をつくっていけるかどうかっていうのが大事で、僕はすごく楽しくやらせてもらっています。それはたくさんの人に伝えていかなければいけないなと感じましたね。

(静岡時代):私は介護について全然知識がなくて。給料が安いとかもテレビやインターネットなどからの情報しかなくて。実際に介護職の方がどういう生活をしているのか、どういうことを感じて仕事をやっているのかも、こういう機会で初めて知って、自分がいつの間にかつくっていた固定概念が変わってきました。

(野中さん):給料が安いとか、シフト勤務で土日が休めない、とかいうのは、考えようによってはどうにかなりますよ。同じような条件のお仕事だって他にもあるでしょ? 介護職だけじゃないんです。僕らは新たに介護のプロになってくれる方をいつも探し続けているんですが、学生さんたちはどんなところに興味を持ってくれるんですかね。

(静岡時代):そもそも現場で働いている方とも接点がないですよね。でもこうしてお話を聞いて、みなさんがそれぞれ想いを注いでいる様子を見聞きできるのは、体験として大きいと思います。あと気になるのは、みなさんが今の仕事に就こうと思ったきっかけでしょうか。

(小林さん):私は元々、小さい頃から祖父母と一緒に暮らしていたんです。お年寄りの存在を身近に感じていたんですね。中学か高校のときに、夏休みを使って短期間のボランティアに参加して、あまり意識もせずに介護施設に行ってみたんです。そうしたら、すごく大変そうなのもわかったんですが、何も知らない素人の私に利用者のみなさんが笑顔で「ありがとね」って言ってくれて。それにすごく感動して、素敵な現場だなと思ったのが始まりでした。

(野中さん):僕も同じような経験をして、この世界に入りました。20歳そこそこで、そんなに福祉の意味や価値がわからなかったですが、どうやって楽しく過ごせるかということは考え続けてきました。面白いこと、楽しいことって、体使って、大変な部分があってもそれを乗り越えるのが楽しいものです。

(静岡時代):私は昨年、祖父を亡くしたのですが、そのときになって介護についてもう少し知っておけば良かったなと思いました。というのも、私の両親が北海道出身で、実家が群馬。祖父は北海道でしたから、どうしても傍にいてあげられなかったんですね。自分ができることを全然見つけられなかったんです。また、祖父のことだけでなく、両親の心配や不安だってあったと思うので、私は他にどう向き合うことができたかな、というのは今一度考えてみようと思っています。これって、個人がどう動くか、という面と、今後の教育を考えることにもつながりそうなんですが。

(見平先生):大体20歳前後の学生さんたちは、自分が年をとるイメージってないでしょ? だから介護の世界とは無縁だと思っている人が多いのかもしれない。最近は、おじいちゃんおばあちゃんと同居している人たちも随分減っているしね。

私は自分の学生には、おじいちゃんおばあちゃんがもしも寝たきりになったらどうしますか、と聞くんです。たちまち慌ててしまうよって。あなたは自分のことだけ考えていればいいけれど、両親はおじいちゃんおばあちゃんのことを考えなきゃいけなくなる。そのうえでお仕事もあなたのことも。だから、今から心の準備しておこうよ、って伝えるんです。

自分の問題であるとしたときに、直接は関わらないからと思いがちだけど、結局は間接的にでも自分に影響があるとわかっていてほしい。
あまり会えないおじいちゃんおばあちゃんであっても、最後は安らかにしてもらいたいでしょって言っています。心に余裕がなくなってくると、ぎすぎすしちゃうでしょ。だから、どんなことすればいいか、どこに相談すればいいか。最低限の知識は持っておいた方がよいと思います。知識をもっていれば、職業として選ばなくても、どこかで役に立つことにつながるんですよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

いままさに現場で働く、県内指折りの若手介護職員が日々情報発信を行っています。静岡県の介護の現場について、詳しく知りたい人は、以下のリンク先も要チェック!
・HP:http://kaigonavigator-shizuoka.jp/
・Facebook:「介護の未来ナビゲーター」で検索!





同じカテゴリー(特集)の記事画像
新しい音楽の創り方〜静岡時代24号『静岡時代の、音楽論』より
今開かれる、静岡パンドラの箱!〜静岡時代12号『静岡魔界探訪』より
静岡時代を残す人【静岡県立中央図書館】〜静岡時代創刊10年記念号「静岡時代ベスト版」
禅問答のように難解な物語の紡ぎ方〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より
文学が先か?音楽が先か?「音」から育てる物語〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」〜
使われるかもしれない“いつか”のためにアーカイブする〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より
同じカテゴリー(特集)の記事
 新しい音楽の創り方〜静岡時代24号『静岡時代の、音楽論』より (2016-06-14 00:00)
 今開かれる、静岡パンドラの箱!〜静岡時代12号『静岡魔界探訪』より (2016-06-07 00:00)
 静岡時代を残す人【静岡県立中央図書館】〜静岡時代創刊10年記念号「静岡時代ベスト版」 (2016-06-03 18:00)
 禅問答のように難解な物語の紡ぎ方〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より (2016-05-31 18:00)
 文学が先か?音楽が先か?「音」から育てる物語〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」〜 (2016-05-24 18:00)
 使われるかもしれない“いつか”のためにアーカイブする〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より (2016-05-17 18:26)


上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
削除
【特別対談】“誰もが幸せ”になる、真の介護とは?(2/2)
    コメント(0)