静岡の地元情報が集まる口コミサイト:eしずおか

静岡時代 シズオカガクセイ的新聞

特集

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

静岡「未来の教科書」シリーズ(2)
わたしたちと静岡県の未来のつくり方=教科書をつくる連載企画第二回。
「つくれば売れる」という高糖度トマト、"アメーラ"。その鍵となったのは、トマト生産者の稲吉正博さんとアメーラのブランドづくりを行う静岡県立大学経営情報学部の岩崎邦彦教授らのチームでした。第二回目より稲吉さんも合流。アメーラの非常に精緻なブランディング戦略を、より深く掘り下げていきます。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

●岩崎邦彦(いわさきくにひこ)先生
静岡県立大学経営情報学部教授・地域経営研究センター長・学長補佐。

●稲吉正博(いなよしまさひろ)さん
トマト生産者。「アメーラ」「アメーラ・ルビンズ」のブランド管理、生産支援、指導管理を行う株式会社サン・ファーマーズ代表取締役。

【聞き手】
●山田瑞己(やまだみずき)さん
静岡県立大学食品栄養科学部栄養生命科学科3年生。

●服部由実(はっとりゆみ)
静岡時代所属。本記事エディター。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜
▲サンファーマーズ・稲吉さんがここから合流です。おみやげにアメーラをいただきました。おいしかった!
(後日、調理していただきました https://twitter.com/shizuokajidai/status/486144943849607168 )



■静岡県から輸出される“ブランドづくりのメソッド”

(岩崎先生)アメーラで実践していることそのものは、トマト以外でもイチゴもそうですし、地域のマーケティングにも利用できます。最近は、東日本大震災被災地域の水産物が苦戦していますが、その地域のブランドづくりでも、アメーラの事例を発信しています。被災地の気仙沼市役所と連携したり、キリンの「絆プロジェクト」という復興地域の再生活動の一端として、ブランドづくりを生産者の方々と一緒に考えたりしている。ですから、稲吉さんをはじめサンファーマーズのみなさんがされていることは、単にトマトだけでなくて、いろいろな分野のブランドづくりに活用できるわけですね。

昔はブランドというと、宣伝費がなくてはできない、テレビCMがないとできないと思われていた。ただ、強いブランドというのは、口コミ(※1)で広がっていくし、パブリシティとかね、記事で広がっていく。口コミにしても、新聞記事にしてもお金がかかりませんよね。口コミは人から人へ伝わっていくもので、非常に強いメディアなんです。実際、稲吉さん、あまり広告宣伝費の予算というのはほとんど使っていないですよね(アメーラの売上高に占める広告宣伝費率は0.01% 岩崎邦彦著『小さな会社を強くするブランドづくりの教科書(日本経済新聞社刊)』・218ページ)。デザインとかパッケージとかは力を入れてやっていますけど。いわゆるテレビCMとかラジオCMとかはやっていませんよね。ただ全国に知られるようになってきて、高い評価をもらっているというのは、小さい企業でも戦略性をもってやれば、大手に匹敵するような強いブランドをつくることができる。大手と同じではなくて、完全に逆張りをいくようなブランドをね。


(※1)口コミでのブランドづくりにおいては、口コミのタネ(=ネタ)があると、消費者は自分の気に入ったブランドを他者に伝えやすい。「アメーラ」では、名前の由来が静岡弁の「甘いでしょ」であることや、アメーラが糖度や栄養度が凝縮しているため水に沈むこと、木村拓哉さんが紅白歌合戦の舞台袖でルビンズを食べたことなどは口コミのネタになっている。〈小さな会社を強くするブランドづくりの教科書・227p〉

■私自身がアメーラファン

(岩崎先生)私がアメーラのマーケティングをやらせていただいているのも、子どもの頃からトマトが大好きで。トマトパスタが大好きなんですけど、アメーラトマトでつくるパスタはめちゃくちゃ美味いんですね。稲吉さんの周りにはいろいろなブレーンがいて、マーケィングは私がやらせていただいていますけど、デザイナーのブレーンとか食の専門家とか弁護士とかいっらしゃるんですけど、みんなアメーラが好きな人。やっぱり美味しいし、本物ですよね。ですから、最高品質を目指すというアメーラの方向性に共感してやっているので、ビジネスでやっているわけではないし、単に研究材料としてやっているのではない。私はトマト、毎日トマト食べても平気ですね。アメーラルビンズも静鉄ストアで買っていますからね。私は「アメーラファン」ですから、そのいいものをつくる生産者のトップが稲吉さんで、稲吉さんの前向きなチャレンジがこういったブランドをつくっていると。

■ブランド力があるから、大ブランドに選ばれる

(岩崎先生)もう販売終了してしまいましたけど、ローソンの今年(2014年)の夏コレクションでアメーラトマトをトッピングしたトマトとチーズのスイーツを販売したんです。

□ローソン2014夏コレクション・トマトとチーズのスイーツ(アメーラトマトトッピング)
http://www.lawson.co.jp/recommend/uchicafe/column/0049.html

(稲吉さん)食べました?

(岩崎先生)食べましたよ。

(稲吉さん)僕も食べましたけど、美味しかったですよね。
だんだんよくなってきてますね(笑)。値段も高くなったけど。


(岩崎先生)コンビニで400円をこえるスイーツですよ?アメーラが目指しているのは最高品質。ブランドづくりにおいても高級感を大事にしていますからね。

(稲吉さん)でも、確か最初は安かったですよね。300円ぐらいで、イチゴに負けてたんですよ。とうとう400円こえたんだな、と。値段に僕も「やった」と思いましたね。最初は3切れとかすごく少なかったアメーラも、5切れになりましたしね(昨年2013年のローソン夏コレクション「アメーラトマトとチーズのスイーツ」は280円)。

(岩崎先生)信じられないのが、ムースのうえに生のトマトがのっているんですよ? そんなデザート信じられないでしょ? ローソンがアメーラというブランドを使ってくれるというのは、アメーラのブランド力を認めていただいたということだと思いますし。
ヤマザキのランチパックでもアメーラを使ってくれるのも、ブランド力を評価してくれたからだろうと。単に美味しいだけでは使わないですよね。ブランドを現在進行形でどんどん磨いていこうと努力してきた。そういう意味で、ある程度成果はでていると思いますし、消費者や市場の評価は高まっていると感じています。


■“アメーラのパスタ”っておしゃれな感じ

(山田さん)どこのスーパーでも、アメーラトマトはちょっと高級なトマトとして売られていますもんね。

(稲吉さん)5、6年前は、松屋にはあったけど、松坂屋にはないね、とかあったけど、今は銀座の高島屋とか三越にも置いてあります。

(山田さん)京都のレストランでアメーラトマトの入った冷製パスタを食べました。

(稲吉さん)京都にも出てますよね。

(岩崎先生)アメーラにはブランド力があるので、シェフの方もメニューに使ってくださるんですよ。アメーラのパスタってなんとなくお洒落な感じもするじゃないですか。語源はね、静岡弁の「甘えーら」ですけど。カタカナで書いているのは、イタリアっぽい響きがするとか、お洒落なイメージがあるとか。外国人の方もお洒落なイメージを持たれて、音もいいので。ネーミングは、ブランドをつくるうえで品質ともに重要になってきますからね。「アメーラ」という個性的な名前で、且つ高級感のある名前は非常にブランドづくりにおいて力になっていると思います。

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

■口コミにしやすい言い回しを考えてカタログを作っている

(稲吉さん)ただ、デザイナーさんにお金を払ってつけていただいたものですからね。それを言っておかないと。農家のダジャレで出来ている名前ってたくさんあるじゃないですか(笑)。実はアメーラもそう思われがちですけど、ちゃんとこう、科学的にね、プロがコピーライティングをしているんです。岩崎先生の影響もあって、口コミにしやすい言い回しを考えながらカタログなどをつくっているので、割と口コミしやすいです。「一言でいうとなに?」と聞かれたときに、答えるものはもう既にカタログとかそういうものに書いておく。それで覚えてしまえば、すっとしゃれべれる。答えやすいということでね。それもすごくマーケィング的に考えられている。

(岩崎先生)マーケティングにここまで力を入れている生産者の方は非常に少ないですよね。農業をされている方も、みんな言葉ではブランドは大切だと言います。では具体的になにをやっているかというと、何もやってないことも多いんですよ。ただ、稲吉さんやサンファーマーズの場合には、そのためにこういうパッケージをつくりましょう、ラベルにこだわりましょうとか、口コミを生み出すカタログを作りましょうとか、実際やっているということですよね。行動して成果を出しているというところがすごい。

■「野菜ではない、フルーツである。アメーラ・ルビンズ」

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

(岩崎先生)頭の中に絵が描けないとか、イメージが浮かばないとだめで、例えば、このアメーラ・ルビンズはとても個性的な形で、これを一回見ると二度と忘れないと思うんですよ。ネーミングも、「ルビー」と「ビーンズ」ということで「ルビンズ」と分かりやすいですよね。四文字の短い名前で覚えやすい。長い名前ですと、口コミしにくいということもありますので、固有名詞で、且つ覚えやすくて、お洒落なイメージということで、ネーミングにもこだわっています。まあ、「アメーラ」にしても、「ルビンズ」にしても、覚えてもらいやすい名前だと思いますね。

(山田さん)「ルビンズ」ありきの「ゴールド」ですよね。「ゴールド」だけだとちょっとよく分からないですけど、「ルビンズ」がまずありきで「宝石」のようでもある。

(岩崎先生)この話だけでも、30分くらい話せますよ(笑)。最初ね、黄色のルビンズだからね、「キビンズ」って話になったんですよ。「ルビンズ」「キビンズ」ってね、お笑いコンビみたいじゃないですか。それで「キビンズ」は却下になって、次は黄色だから「イエロー」とかね。「イエロー」はなんか高級感がないじゃない。次は、「ソレイユ」がいいと。

(山田さん)ひまわり、ですね。

(岩崎先生)「ソレイユ」で「ひまわり」が出てくる人、珍しいですよ? ソレイユはまさに「ひまわり」なんですけど、ただソレイユって言っても、「美容室ソレイユ」とかね「シルク・ドゥ・ソレイユ」とかね、あるじゃないですか。やっぱり固有名詞でいくべきだと。じゃあ「ルビンズ」を使って、高級感がある「ルビンズゴールド」と。これが出来たのは3、4年前ですけど、最近は「セブンゴールド」とかね、まさに広がってきているので。ですから、やり方としてはしっかりと考えてネーミングをすると。

ルビンズという傘の中にゴールドがあるので。広げるときに、さっき洋服が受けたからといってスリッパをつくると失敗するという話をしましたけど、広げ方は赤があるからゴールドがあるということで、非常にお互いがお互いを高めるような広げ方をやっている。そういう意味でも全体的にハーモニーを重要視しています。だから、パンフレットを見ていただいても、調和がとれているんですよ。

多いのは、前回は洋風だから、今回は和風にしようとかね。何が何でもゆるキャラを使うとかね。例えば、高級でやるなら、ゆるキャラは合わないじゃないですか。そういう意味で、アメーラのいろいろな商材を見ていただくと、非常にシンプルなんですよ。色も赤と白しか使っていないんですけど、できるだけ洗練されるように、デザインにもこだわっています。


■“大人のイメージ”なはずなのにゆるキャラが……!?

(静岡時代)アメーラの箱はシンプルな一色刷。赤の特色もただ単にトマトの赤じゃなくてフレッシュな感じのする色を指定してるんですね(特色とは、通常のカラー印刷に仕様するインクとは異なった特別な指定色のこと。現物の印刷の色は彩度が高くて独特の色合いです)。でもぜんぜん安っぽくなくてかっこいいです。

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

(稲吉さん)アメーラってね、市場でものすごく目立つんですよ。遠くから見ても。できるだけコストをかけないというのもありますし。贈答品のようなカラーのいい綺麗な箱もあるんですよ。でも、それはお金がかかってしまう。とは言え、デザイン性だけでかっこよくしないといけない。そうそう、今これ(アメーラちゃん)消えたんですよ。

(静岡時代)消えちゃったんですか? この子、もういないんですか?

(岩崎先生)アメーラちゃんはね、消えてもらうしかないってね(笑)。高級感でいこうということで、カゴメだったら親しみがあってこれでいいだろうけど、アメーラはそうじゃありませんよね。なので、高級感でいくんだったらこれはないほうがいいだろうと。どんどん進化というか、ハーモニーが合うように、ゆるキャラは使わずに「大人の女性」のイメージを持ってやっています。とはいっても、アメーラは甘いので、子供もルビンズとか大好きでパクパク食べてくれるんですよ、事前のテストマーケティングでもね。ただ、我々の頭にあるターゲットというのは、子供に好かれようというのではなく、大人の女性とか、洗練とか、お洒落とか、情緒に訴えるということでやっています。ルビンズは赤が綺麗で、本当にルビーのような感じで、光があたると輝くようなイメージで。

■発想をひっくり返した。トマトにヘタって本当に必要?

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

(稲吉さん)日持ちもいいんですよね。これ(写真のアメーラ・ルビンズ)は先週の経営戦略会議のときのものですから、もう一週間くらい経っています。

(岩崎先生)そうですね。日持ちもいいですし、あとルビンズを稲吉さんがつくったとき、ヘタが取れてしまうと。ヘタが取れるトマトというのは、今まで市場ではクズで商品にならないと言われていたんですね。

(山田さん)たしかに、真っ赤な実に緑のヘタありきのトマトのイメージですもんね。

(岩崎先生)そう。ただ、じゃあお客さんはヘタがあるからトマトを買うのか、というとそうじゃありませんよね。そこで稲吉さんと言ったのは、ヘタを取っちゃえと。ヘタを取ることによって、ルビンズも綺麗な形になりますし、ごみも出ないし、お洒落なイメージにもなるので、消費者にとってはそっちの方がいいかもしれないと。

(山田さん)確かにトマトイメージが刷新された感じします。フルーツみたいですもんね。

(岩崎先生)リーフレットにも「ルビーのようなフルーツ」ということで、「ルビーのようなトマト」と書いていないということがひとつデザイナーの方のこだわりかなと。「ルビーのようなトマト」と書いてもよかったと思うんですけどね、ただそれをやらないというのは、お客さんの情緒に訴えるという戦略になっている。

(稲吉さん)最初は、「キャンディタイプの」とか、そういう言い方もしたりしたんですけど、とにかくさっき先生が言ったように、野菜っぽいイメージではないですよね。

(静岡時代)野菜軸だったらカゴメと同じものさしの上の勝負になってしまう……。

(岩崎先生)アメーラ・ルビンズは独自性がありますよね。強いブランドは独自性が必要ということで、そういう意味で、さきほどブランドのとんがりの話をしましたけど、とんがりがある。ただ、不味いとだめなんです。すごく美味しいし、品質の管理もしっかりとされている。生産の仕組みもしっかりされていて、技術とかの土台があるからこれが出来るんです。

■ブレーンになっていただけませんか?

(山田さん)ところで、岩崎先生と稲吉さんはどんな経緯でお知り合いになって、今に至るんですか?

(稲吉さん)農業法人協会で僕が役員をやっていたときに、もう10年近く経っているんですけど、総会で先生が講師で見えられたんですよ。そこで初めてお会いして「面白い話だな」と。
当時、先生は40歳くらいでしたかね。すぐに先生の本を買いにいったのね。先生が最初に出された本『スモールビジネス・マーケティング』を買ったんですよ。それを読んで。あれは教科書っぽいですよね。分からない単語を調べながら読んで、やっぱり面白いなーと。それで、農業法人協会のAMP(Agree Marketing Project)のサポートをしてもらえませんか、と頼みにいったんです。トマトをお土産に持ってね。そしたら先生が「わたしトマト好きなんですよ」と言うものだから、「じゃあ、ついでにアメーラの外部ブレーンになっていただけませんか?」とお願いしたんです。そしたら「いいですよ」って。


(静岡時代)結構、簡単に(笑)。でもそれがタイミングだったのかもしれませんね。

(稲吉さん)もう7、8年経ちますね。ちょうど僕たちがサンファーマーズをつくって、軽井沢に農場をつくって、一気に出荷量が倍で動くような時期にタイミングよくこういうことになった。それまでデザイナーさんとずっとやってきたことがブラッシュアップされたり、デザイナーさんにとっても勉強になったと思う。先生もイメージで言うものをデザイナーさんが形にしていくじゃないですか。先生はデザイナーじゃないから「こういうイメージだよね」とデザイナーに伝える。すると、どんどん先生の方へデザイナーからデザインが送られてくるんですよ。それでA案・B案・C案どれがいいとなって、学生に聞いてみます、主婦に聞いてみます、という風に決めていって、やってきたんですよね。すごく我々も面白い。

よく先生の実験材料じゃないか、とかそういう見方をされる場合もあるんですけど全然違って、一緒になって面白く、何十億というトマトをつくっている。まあ先生はそういう人を育てる職業じゃないですか。さすがに我々みたいな小さな会社が先生の研究材料になっていいかとは話が別ですけどね。ただ、近くにそういう農家もなかなかいない。そういう意味では運よくコラボレーションできたなと思いますね。


(岩崎先生)非常にいい関係でコラボレーションさせていただいて。たまに、トマトももらえますしね(笑)

■マーケティングでものをつくれるか?

実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜

(山田さん)岩崎先生のマーケティングのロジックが、実際に生産するトマトの品質に影響していったとして、例えば、アメーラルビンズもマーケティングありきで品種改良をされていったとかはあるんですか?

(岩崎先生)まず稲吉さんが独自の種を入手されたんですね。

(稲吉さん)まずこちら側にアイデアがないと、「じゃあ先生、何かつくってください」という話ではないので。だから、先ほども先生が話されてましたけど、「こういうトマトがあって、ヘタが取れちゃうんだよね」「じゃあ、取ってしまいましょうか」と。例えば、同じミニトマトで丸くて、ヘタがついているものだったら、ものすごく美味しくても、次に買うときに「あれはなんだっけ?」と思うじゃないですか。だけど、ヘタもないし、長いし。今「アイコ」というトマトが人気が出てきていますけど、当時こういう長いトマトはあまりなかったんですよ。

形も違うし、ちょうど収量が取れないので、高く売るにはどの程度の量が妥当かみたいなこともやったんですよね。まあそうすると、デザイナーさんなんかも、試しに買うとすると、300円くらいまでじゃないかと。500円だと試しに買わないんじゃないかと。300円で売れる単価というと、我々は卸しで200円くらいだねと。200円なら何粒いれるなら我々は採算があうの? となって、大きさやパッケージが決まっていく。その間に、先生に食べてもらったり、欠点をみてもらったり、そうして最終的に出来上がったものがこちらなんですね。ちなみに、こちらは蓋が閉じないからシールを貼っているんですけど、何枚もシールを貼ると手間がかかってしまうので、長いシールで両側から貼ると。


(岩崎先生)この貼り方も重要で、ずれないように真ん中にくるように貼らないといけない。デザイナーさんがね、お店にいくと「ずれているものがある」ってね、チェックしてくれる。

(稲吉さん)そういう個々の専門家の人たちがいっぱいいるということが大事ですよね。気が付かないですよね? 曲がっていても。

(岩崎先生)つくる人と買い手のギャップがあるので、それを上手く縮めていくことがマーケティングの作業になってきますよね。消費者の目線で。ですから、これをつくるときも、最初、消費者に食べてもらって、意見をもらって。みんな「おいしい」って言ってっくれた。香りもいちごみたいな香りで評判がいいんです。

(山田さん)ここでもう甘い香りしますもんね。

→ 《実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【後編】〜》へ

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

——編集後記——

イメージに合わないから「ゆるキャラ(アメーラちゃん)には消えていただいた」というエピソードを聞いて、あらためて、ブランディングの戦略とはコミュニケーションの文法そのもので、アート・創作の技法なんだなぁと思いました。

伝わることを重視した創作の基本は、導入では扱うものの全容がおおまかにつかめるようにしておくこと。わかりやすいフレーズをつくる際は、省略にするわけではなくて象徴化する。文脈には一貫性がないといけない。作り手は扱う素材や方法のひとつひとつや意味を全部分析して把握して、それを場面場面で、使用することの意味や意図を全部説明できる状態でいる必要がある。広げた風呂敷は作り手の「メッセージ」によってまとめる。

それって、大学での勉強にも通じる部分があるのではないかと。
大学では、自分の知らないものを自覚してどのように知るか。場合によっては、何に応用できるのかを考えなければならない。そして、自らが発信者(作り手)となって、対大勢に自分の考えを伝える場面もある。ブランドと大学生。一見すると離れたようなものではあるけれど、実は私たちも参考にするべきことや大学生活のヒントがたくさん潜んでいそう。

次回は、現役大学生の山田さんにもスポットを当てて、お話を進めていきます。

////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////


同じカテゴリー(特集)の記事画像
新しい音楽の創り方〜静岡時代24号『静岡時代の、音楽論』より
今開かれる、静岡パンドラの箱!〜静岡時代12号『静岡魔界探訪』より
静岡時代を残す人【静岡県立中央図書館】〜静岡時代創刊10年記念号「静岡時代ベスト版」
禅問答のように難解な物語の紡ぎ方〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より
文学が先か?音楽が先か?「音」から育てる物語〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」〜
使われるかもしれない“いつか”のためにアーカイブする〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より
同じカテゴリー(特集)の記事
 新しい音楽の創り方〜静岡時代24号『静岡時代の、音楽論』より (2016-06-14 00:00)
 今開かれる、静岡パンドラの箱!〜静岡時代12号『静岡魔界探訪』より (2016-06-07 00:00)
 静岡時代を残す人【静岡県立中央図書館】〜静岡時代創刊10年記念号「静岡時代ベスト版」 (2016-06-03 18:00)
 禅問答のように難解な物語の紡ぎ方〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より (2016-05-31 18:00)
 文学が先か?音楽が先か?「音」から育てる物語〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」〜 (2016-05-24 18:00)
 使われるかもしれない“いつか”のためにアーカイブする〜静岡時代42号「静岡時代の未来予測」より (2016-05-17 18:26)


上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
削除
実践! 静岡ブランドの実力 ~アメーラ・トマト【中編】〜
    コメント(0)