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「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。

連続特集:「大学の枠を超えて静岡県の大学生が集まって交流する場をつくろう!」
去る2012年末、とある大学生のアイデアが、静岡県の大学生と静岡県庁が共同でつくるSNS『静岡未来』のなかで反響を呼びました。題して「静岡県カレッジサミット」構想。

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=218765448248474&set=a.179280012197018.18201.174268652698154&type=1&theater

東中西部の3つの地域に分かれた静岡県の大学生。でも、お互いがもっと近づいて「知り合えたら」、自分たちが普段それぞれの大学で学んでいる専門的な知識や経験、大学が持つ“学びの場”としての魅力や知恵を持ち寄って「交流」できたら、大学生ひとりひとりにとっても、大学にとっても、静岡県の地域にとっても「面白いこと」生まれると思うのです。絶対に。

「カレッジサミット」は、なんとしても実現させたいわたしたちの「夢」になりました。「カレッジサミット」が目指しているのは、静岡県の大学が学びの場としてしなやかでもっと強くなること。より広く学べるようにするために人と知恵を集めること。静岡県の大学で学びたいと考える学生を「楽しく」増やすこと。

さて、そう考えだしたら、まずは「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」みたいなところから考え始めなくてはならないのだなと思いました。
カレッジサミットの舞台となる静岡県の大学の今とこれからを静岡県立大学学長・木苗直秀先生に伺いました。聞き手は、カレッジサミット運営メンバーであり学生代表の小池麻友さん(静岡県立大学食品栄養科学部2年)と同運営メンバーであり、静岡大学にて地域連携プロジェクトを行っている河村明里さん(静岡大学人文社会科学部2年)。

成人してからは親御さんからの金銭的支援を受けずに大学、大学院の学生時代を過ごした木苗学長。大学の現状とこれからのお話を伺うなかで見えてきたものは、私たち大学生が何者であるかということ。また、大学や地域に対してどのように参加し、学ぶのかという一つの姿勢を教えていただきました!

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「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
企画モノ・タイトルを考えるのが好き。静岡県立大学のキャッチフレーズ「個を拓き、強い絆で知を発信」は学長作!

●木苗直秀さん(写真中央)
静岡県立大学学長。静岡県出身。1965年静岡薬科大学薬学部薬学科卒業。1970年同大学院薬学研究科博士課程修了。専門分野は食品衛生学、食品安全学。2009年より現職。お茶やわさびをテーマにした研究も行っている。木苗先生の学生時代はバイトをして大学へ行くのが当たり前だったとのこと。

●聞き手:小池麻友さん(写真左)
静岡県立大学食品栄養科学部食品生命科学科2年。静岡県出身。静岡県カレッジサミットの運営メンバーであり、学生代表。普段、大学では食品の加工、含有物質や、生体機能などヒトと食に関することを学んでいる。取材にはお気に入りの「静岡県バッジ」をつけて臨むのがポリシー。

●聞き手:河村明里さん(写真右)
静岡大学人文社会科学部経済学科2年。愛知県出身。静岡県カレッジサミットの運営メンバー。大学では財政学を専門としたゼミに所属しているほか、地域連携プロジェクトの第一期生として活動している。


・静岡県公立大学法人 静岡県立大学 HP: http://www.u-shizuoka-ken.ac.jp/
・大学ネットワーク静岡HP:http://www.daigakunet-shizuoka.jp/

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「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
今回、訪れたのは静岡市駿河区谷田地区に位置する静岡県立大学。1987年に静岡薬科大学、静岡女子大学、静岡女子短期大学を改組・統合するとともに新学部を設置して開学した総合大学。

「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
静岡県立大学の谷田キャンパスでは、現在2,900人の学生が学んでいる。黄色の絨毯ができるこの季節は、学生からも大人気

大学がそこにあるということは、その地域に占める若者が凝縮されているということ

——正直なところ「なぜ静岡県の大学で学ぶのか」、その価値を見出している学生は少ないと思います。私たちはカレッジサミットを通じて、どの国でも、どの県でもない、「静岡県」で学ぶことに憧れる人を増やしたいと考えているのですが、そもそも地域にとって「大学」とはどのような場所なのでしょうか?

(木苗学長)大学が何をする場かというと、まず挙げられるのは「教育」と「研究」です。その他に最近は3つ目として「社会貢献」が問われています。社会貢献には、産学連携や一般の方に対して実施される公開ゼミなどの地域貢献や国際貢献が含まれます。大学は学術の中心として培われた教育・研究の成果を広く社会に発信する、そして社会の発展に寄与するということが求められています。

大学にはこの「教育」「研究」「社会貢献」の三本柱がありますが、大学がそこにあるということは、その地域に若いパワーが集結しているということですよね。静岡県には現在23の大学・短大があり、専門学校生を含めると約39,000人もの学生がいます(高等専門学校、サテライトキャンパス等を含む)。そのうち本学には、短期大学部生を含めると3,500人の学生がいます。県内の大学には全国各地、世界中から多様な学生が集まっていて、留学生は1,600人にのぼります。留学生とのコミュニケーションを含めて、大学は地域にとって大きな意味があると思います。

また、今年度末に設立される「大学コンソーシアム」は、大学間の連携に加えて、地域や企業を絡めて静岡県内の大学の質的向上を目指そうというものです。各大学でまとまるのではなく、共同授業や共同研究など大学間のみならず地域との連携が重要視され、既にその動きも始まっています。

「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
基本、日本と世界を自ら飛びまわる。

——大学に地域貢献が求められるなかで、静岡県立大学をはじめ、静岡県の大学ならではの取り組みや魅力はありますか?

(木苗学長)本学でいえば、大学の枠を超えて地域と連携するプロジェクト「ムセイオン静岡」を進めています。大学周辺にある5つの教育文化機関(静岡県立美術館、静岡県立中央図書館、静岡県埋蔵文化センター、SPAC静岡県舞台芸術センター、グランシップ)と連携し、大学が文化の情報を発信したり、地域の人々と直接交流する場を設けるなど、静岡の文化芸術交流を通して、大学と地域がより繋がりを持てるような環境作りに取り組んでいます。

また、去年、一昨年と実施している本学の公開授業「茶学入門」では、今年度より「静岡学」と銘打ってお茶だけでなく静岡県の特産物についても学んでいます。静岡県にはお茶、みかん、わさびやガーベラなど219品目もの特産物があります。静岡県の農林業、水産業を知ってもらおうと、それぞれを専門とする先生方が地域に出向いて講演を行っています。

最近はこうした静岡の産業や歴史に関する学問を取り入れる大学が増えています。それぞれの大学の専門性を活かした交流は、大学や学生、地域にとっても魅力的なことですよね。

地域のエンジンになる。いま、大学に求められる“新機能COC”とは。

——静岡県立大学でも経営情報学部と草薙の街がコラボレーションした「草薙くいだおれ祭」がとてもいいなと思いました。今学んでいることを地域にどう活かせるか、大学生である自分にできることを見出したいと思う学生は多いと思います

(木苗学長)大学での学びを地域に活かす取り組みに関して、今年度から文部科学省が「地(知)の拠点整備事業」というものを開始しました。これは、大学と自治体が連携し、大学全体として地域を志向した教育・研究・社会貢献を推進していく取り組みです。知の拠点としての大学が、大学の専門性、教養を持ち寄って地域の課題解決、活性化に活用していく。課題解決に資する様々な人材や情報・技術が集まる地域コミュニティの中核的存在としての大学の機能強化を図ることを目的としています。

これをCOC(center of community)といい、要するに地域のエンジンとなって働くような大学が求められているということです。大学と地域がさらに強く連携し、地域発展を遂げるための材料づくり、また大学が自治体と単に連携するだけでなく、学生を巻き込み、尚且つ将来的な教育カリキュラム・人材育成も求められています。

例えば、先ほどの「静岡学」を取り入れることもそうです。大学で学問をするだけではなくて、静岡学を専門とする方は街にもいるわけです。学生が街へ出て、大学の外で学ぶということも大切です。この事業は文部科学省の公募事業となっています。残念ながら本年度に県内の大学から応募したものは採択されませんでした。次年度は頑張ります。

また大学同士のネットワークも重要です。静岡県では学長や先生同士の交流が活発に行われていますが、学生同士の交流が少ないですよね。20年ほど前は各大学の学生を集めてスポーツ大会を行ったり、交流の場を企画していた時代もありました。大学同士の連携が取れていれば、一つの大学で行われる研究・活動の輪が他大学にも広がりますし、個々の大学の活動が地域全体で共有できますよね。

先ほど述べた「大学コンソーシアム」も全ての県内大学が連携し補完しあうことで、大学の質的向上を目指すというもの。大学の輪を広げていくことは今後より一層求められていると思います。「カレッジサミット」もそうですが、こうしたことを学生がアイデアを出してやろうとすることは大変喜ばしいことだと思いますね。

「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
静岡県立大学が位置する草薙の商店街。「草薙くいだおれ祭」の他、県大生と商店街のコラボ企画が急増中です!

「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
「大学のことは全部頭の中にインプットされているから、なんでも聞いて!」と木苗学長。

グローバルに、ある場合にはローカルに。大学とは次を託す人材を育て、鍛えるところ

——是非、実現させたいです!最後に、これから静岡県の大学がどう変わっていこうとしているのか、また大学生に求められるものを教えてください。

(木苗学長)静岡県が頭を抱えている問題のひとつが人口減少です。例えば静岡市は人口71万人ですが、毎年2〜3千人ずつ減っています。企業の海外移転に伴う人口流出や地震への不安による移転者数の増加が要因に挙げられますが、少子化問題も大きく関係しています。この人口減少や少子化は大学が直面しているひとつの課題です。

現在、静岡県における大学・短大への進学率は約50%、専門学校を含めると77%ですが、大学への進学率はあがるものの、全体的に少子化により受験生の数が減っていますよね。大学は全国で国立は86大学、公立は83大学、私学は700大学近くと、計800余りの大学があるけれど、絶対数が減っているわけだから、私学の半数近くは定員を割っていると思います。経営が困難になった私学が県立や市立になったり、いくつかの大学と統合したりということも増えてきました。また学生数が減ると、先生の数も減らさなくてはいけません。

一方で、現在の大学は、グローバル化の中で存在感を発揮する大学を目指し、人材を育成するため、博士号取得や留学を薦めています。しかし、博士号もっているものの就職できないという人が日本に約3万人もいます。進学や留学においては、国や地域をはじめとしたサポート環境が必要だと思います。なぜならば、彼らは次世代を担う人材になるわけですから。グローバルに物事を考えつつも、同時にローカルに、地域のことを真剣に考えていく人材を育てるということをないがしろにしてはなりません。

大学は次に託す人材を育て、鍛えるところです。各々の大学がそれぞれの特徴を出して、入学したら徹底的に教育する。そして大学生は目的意識を持ち、大学に学び・地域でも学ぶということを意識してほしいと思います。是非、大学生活の中で沢山の人と交流してもらいたいですね。大学での付き合いは社会人になっても続いていくもの。一生の仲間を増やしてほしいと思います。
(取材・文/河村明里)

「私たちはなぜ静岡県で学ぶのか」静岡県立大学 木苗学長、かく語りき。
ゆくゆくは自伝を書きたいと思っているとのこと。いつでも書けるよう、手帳はぎっしりメモ等で埋め尽くされていた!

●木苗直秀さん(写真左)
静岡県立大学学長。静岡県出身。1965年静岡薬科大学薬学部薬学科卒業。1970年同大学院薬学研究科博士課程修了。専門分野は食品衛生学、食品安全学。2009年より現職。お茶やわさびをテーマにした研究も行っている。木苗先生の学生時代はバイトをして大学へ行くのが当たり前だったとのこと。

●聞き手:小池麻友さん(写真中央)
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