静岡の地元情報が集まる口コミサイト:eしずおか

静岡時代 シズオカガクセイ的新聞

静岡の街から

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

シリーズ:ふじのくに薬剤師シゴト大全(1)
実は医薬品産業がさかんと言われる静岡県。その理由と薬剤師の仕事について、静岡県健康福祉部薬事課の杉井邦好さんと科研製薬株式会社静岡工場の横山政明さんに聞きました。日本人の健康と美は静岡県が支えていました。

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜
およそ170名もの薬剤師が働いている静岡県庁。行政薬剤師の担う業務は、薬事行政・衛生行政・環境行政・研究、試験検査業務と幅広い。特に静岡県では、県内東部地域を拠点に、医薬産業の集積と発展を目的とした「ファルマバレープロジェクト」を推進中。また日本の大学で初めてとなる「創薬探索センター」を静岡県立大学に開設するなど、医療健康産業の育成にも注力しており、その業務の最前線においても、薬剤師が携わっている。


医薬品に携わるなら、まずは静岡を知るべし


——薬剤師と関係の深い医薬品・化粧品業界にとって、静岡県はどんな地域なのですか?

静岡県薬事課 杉井さん:静岡県は、発表されている最新の統計では、平成22年から平成25年の4年間、医薬品と医療機器の生産金額が全国1位でした。医薬品で言えば全国シェアの10%ほどを占めています。また化粧品の生産も盛んで、静岡県が『日本人の健康と美を支えている』と言っても過言ではないのです。

科研製薬 横山さん:当社は、本社が東京ですが、昭和30年代に発酵関係の膨大な水を使う工場をつくることになり、その際に、現在の場所(藤枝市)に工場建設を決めました。近くに大井川があり、静岡県のように水が豊富で大都市圏にも近い環境は、製薬企業にとって大きなメリットです。

杉井さん:科研さんに来ていただいた昭和30年代くらいから、本県には医薬品・医療機器メーカーが集積してきました。自然環境はもちろん、現在は2本の高速道路も整備されるなど、交通の要所であることもポイントです。また県東部においては、富士山麓先端医療産業集積構想(ファルマバレープロジェクト)をつくり、官民協働での製薬・創薬の拠点づくりも推進中です。実はリーマンショックが起きた際に、様々な業界に多大な影響が出るなか、どんな時にも必要な医薬品業界にはほぼ影響がありませんでした。静岡県は健康寿命日本一を謳っているので「健康」をテーマとした産業には、今後も安定的な発展が期待できます。

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

国際的に認められた県の薬事機動班が、医薬品製造と輸出を支える


——静岡県は「薬学」がとりわけ必要とされる地域と言えそうですね。静岡県にある薬剤師の仕事はどのようなものがありますか?

杉井さん:病院や薬局で調剤を行う薬剤師のイメージは具体的に持ちやすいと思いますが、その大きな2つの選択肢以外にも、薬剤師資格や、学んできた薬学を活かす場は多くあります。静岡県庁で言えば、医薬品・化粧品の販売や製造管理をチェックする薬事衛生だけでなく、水質分析や富士山麓の不法投棄の監視などの環境保全の仕事も県の薬剤師が担っています。特に薬事機動班という医薬品等の製造所の監視専門チームは他の都道府県にはありませんから、関係産業が盛んである証拠とも言えるでしょう。医薬品はグローバルな商品なので、EUなどの査察調査員の基準と私たち県の査察基準が同じレベルにあることも求められます。静岡県のチェック基準が国際的にも認められているから、医薬品の輸出がスムーズに行われているんですよ。

横山さん:「機動班」という名前からしてすごいですよね。他県の業界関係者から、「静岡県は薬事機動班がいるから大変だよね」なんて言われます。でも実際には、一方的な指導ではなくて、薬剤師の立場からより良い製造環境のためのアドバイスもしてくれるので企業側としても助かっているんですよ。確かな基準でチェックしてもらえているというのは何より安心です。海外から査察が来ても動じなくて済みますからね。

杉井さん:産業規模が大きいゆえのメリットは他にもあって、例えば静岡県の製薬協会には115社が加盟しており、関係者で合同研修や情報交換を行っています。もちろん医薬品・医療機器・化粧品と、それぞれ専門の違う薬剤師が集まりますから、関わる製品は違えど、横断的に交流が図れるのも、当事者である薬剤師にとっては刺激的な環境ではないでしょうか。

横山さん:実際に私たちも他企業の方と交流するなかで、工場運営に関して気をつける点や、もっと工夫できそうな点を学んだりしています。互いに持っている知識・経験を深め合う機会にも恵まれている地域だと思います。

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜
▲工場真横には良質な水をもたらす大井川が流れる。「工場でお茶を淹れる時にも、井戸から汲み上げた伏流水を使います」と横山さん。

調剤薬局の「かかりつけ薬局」化。薬剤師の職も変化していく


ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜

——これから薬剤師として働く学生に向けて伝えたいことはありますか?

横山さん:製薬会社であれば「新薬開発」に関心を寄せる人が多いでしょう。でも今は新薬の実現に辿り着けるのは、一万分の一の確率とも言われている非常に厳しい時代です。開発を目指すことも素晴らしいと思いますが、工場の管理監督など薬剤師が必須の場もあれば、資格を持ったMRとして活躍している人もたくさんいるように、薬学を学んできた経験が活きる場は数多くあります。一企業で働く中で、軌道修正しながらキャリアを積んでいくのも面白いですよ。

杉井さん:2025年に団塊の世代が後期高齢者となることを受け、これから最も変化を求められる薬剤師の職場は薬局です。国が主導して調剤薬局の「かかりつけ薬局」化が進められることになりました。これからは薬剤師が薬局の外に出て、地域住民の健康維持・増進に努めていかなくては生き残れません。他の職業と同じように、薬剤師の仕事も時代とともに変わるのです。社会の流れの中で、本当に自分に向いている、希望したい、と思える仕事に就いていただくためにも、薬剤師の就ける多様な仕事を知ってもらいたいです。県庁では、県民全体の健康・安全を守る仕事が待っています。ぜひ行政の仕事にも注目してください。


◉合わせて読みたい!ふじのくに薬剤師シゴト大全!
ふじのくに薬剤師シゴト大全〜これからの社会で求められる薬剤師とは?〜
シリーズ:ふじのくに薬剤師シゴト大全(1)就活を目前に控えた、静岡県立大学薬学部生の川崎温子さんと有泉早紀さん。学んできた薬学を人や社会のためにより良い形で活かすためにはどうしたら良いのか?薬剤師として静岡県庁で働く内田貴啓さんと八木聡子さんに、現役生が聞きました。■座談会メンバー現在約9…


ふじのくに薬剤師シゴト大全〜不法投棄パトロール1日密着〜
シリーズ:ふじのくに薬剤師シゴト大全(2)病院や薬局などで、「薬の調合」をする姿が印象的な薬剤師。しかし薬剤師の仕事は幅が広く、廃棄物処理の業務にまで及びます。一見、つながりのないようにみえる職種ですが、廃棄物処理も、実は化学的な組成や特徴などを含めた知識が必要。今回は、静岡県東部健康福祉センタ…




◉静岡県 薬事課からのおしらせ
ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜


同じカテゴリー(静岡の街から)の記事画像
もう一度歩きたくなる、「エッシャーの世界」〜静岡市美術館〜
働く私の静岡時代〜株式会社 サンロフト〜
JR三島駅〜日本大学三島キャンパス〜極私的、古地図研究会
働く私の静岡時代〜株式会社江﨑新聞店〜
働く私の静岡時代〜まちと人をつなぐ情報流通企業 株式会社しずおかオンライン〜
働く私の静岡時代〜まちと人をつなぐ情報流通企業 株式会社しずおかオンライン〜
同じカテゴリー(静岡の街から)の記事
 もう一度歩きたくなる、「エッシャーの世界」〜静岡市美術館〜 (2016-08-25 00:00)
 働く私の静岡時代〜株式会社 サンロフト〜 (2016-06-01 00:00)
 JR三島駅〜日本大学三島キャンパス〜極私的、古地図研究会 (2016-05-26 00:00)
 働く私の静岡時代〜株式会社江﨑新聞店〜 (2016-05-13 00:00)
 働く私の静岡時代〜まちと人をつなぐ情報流通企業 株式会社しずおかオンライン〜 (2016-04-07 15:01)
 働く私の静岡時代〜まちと人をつなぐ情報流通企業 株式会社しずおかオンライン〜 (2016-04-07 15:00)


上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。
削除
ふじのくに薬剤師シゴト大全〜異なる職種の業界二者対談@科研〜
    コメント(0)