学生白書
恋の悩みを一刀両断!『恋愛相談 by学術』〜静岡英和学院大学 波多野純先生〜
男の悩みに女は笑い。女の本音に男は涙? 大学生の恋の悩みをアカデミックに白黒つける。「恋愛」から学問を知る、究極の学術案内です。今回、大学生の"恋の悩み"においてご教授いただく救世主さまは、社会心理学を専門とする静岡英和学院大学の波多野純先生です。

結局、「すごく大事なもの」か「ゴミ」かの両極端

そもそも人はなぜモノをあげたくなるのか。
心理学では、等しい価値のモノを交換することで人間関係や集団同士の関係が維持されると考えられています。例えば、お歳暮をあげるときに「ほんの気持ちですが」と言うじゃないですか。それって気持ちだけをあげることはできないから、何かしらモノの形を取らざるを得ないという理由があるんだと思います。
質問者さんは「思い出の品を処理したい」とのことだけど、処理方法は「捨てる」「譲る」「売る」「しまっておく」「破る」「燃やす」「返す」「使う」など、ざっと考えただけでもこれだけあります。どんな選択をするかは交際期間や交際の質、思い出の品、別れた理由など、モノとの関係性が関連してきます。常に一貫した処理の方法はありません。ちなみに、「使う」は「捨てる」と真逆の処理に見えますが、モノや相手に対する感情の切れ方は同じです。もはやただのモノになっている。

一番たちが悪いのは「返す」ですね。ただのモノにもならないし、思い出の品にもならない、宙に浮いた処理になります。しかも相手に対して攻撃的な感じもする。恋人から貰ったものは、「すごく大事なもの」か「ゴミ」かの両極端です。
結局は、モノに対してどんな意味を付与しているかです。それによってモノは独特の価値を持ちます。僕の専門の社会心理学の研究でアニミズム的思考との人形供養の関係を調べた研究があります。アニミズムとは無生物に対して生命の存在を感じる現象のことです。人形供養をする人は、「人形をゴミとして捨てるのは可哀相」という理由で供養しています。これと恋愛における「共に時間を過ごした相手(またはモノ)だから捨てられない」と感じるのは似ています。分岐点はただのモノと感じられるかどうかです。
万能かつ汎用の方法はありませんが、その都度、状況にあわせて、最もストレスのない方法を選択するといいのかもしれません。

波多野 純(はたのじゅん)先生
静岡英和学院大学 人間社会学部人間社会学科 教授。社会心理学と産業・組織心理学が専門。人が他人のことを人間だと感じなくなる「非人間化」という現象を研究しており、大学生のキャリア意識の形成に関心を持っている。ちなみに、先生自身はどちらかというと思い出の品をぽいっと処理する( 捨てる) 方とのこと。
(波多野純先生/静岡英和学院大学人間社会学部人間社会学科展開科目)
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Updated:2015年11月13日 学生白書