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わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より

わたしの「働きたい」を最大化する大学生必読本:『ワークの掟』より
「働く」には、自己欲求・社会欲求・生存欲求といわれる人間の三大欲求が集約されている。もともと人は働きたい生き物なの? 労働法の第一人者 大内伸哉先生に聞いた、人と労働の関係性。今まさにルールが変ろうとしているその前に押さえたい、はたらく生存戦略!

わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より

■大内 伸哉 先生(写真左)
神戸大学大学院 法学研究科 教授。
東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。主な研究テーマは労働契約論、労働者代表法制。
◉ 「アモーレと労働法」大内先生による労働法をめぐる雑感→ http://souchi.cocolog-nifty.com/

■服部由実(写真右)
NPO法人静岡時代 理事。企画・制作を担当し、『ワークの掟』では企画・編集責任者を務める。




人生における生存戦略。鍵は「プロ」になること


――「正社員であれば安泰」という時代が終わりつつあると言われるのには、どのような背景がありますか?

まず「正社員とはなにか」を考えてみましょう。特徴としては、「終身雇用」と呼ばれる長期雇用が保障されます。入社当時はさしたる技能がなくても、5〜10年かけて企業が育てあげ、一人前の戦力にしていきます。企業は正社員を育成するために、最初に投資するわけです。そのため、長く働いて会社へ貢献してもらうために、終身雇用や年功序列型賃金というシステムをつくります。これらは正社員の引き止め策なんです。

しかし近年、企業にとって、正社員として長くつなぎとめたいと考えたくなるような人材がどれほどいるのかが問われはじめています。

少し前までの日本では、大学を出れば正社員になるのが一般的でした。企業も、個々の労働者にどれほどの能力があるのかという指標を、学歴という外形的な基準を頼りにしていました。しかし大学全入時代を迎えた今、大卒という学歴は一部の一流大学でしか通用しなくなっています。これまでや今も、大学生やその親たちは、正社員になることを考えていますが、これからは難しくなるということです。大卒という学歴が指標とならなくなり、加えて、現代はグローバル化により企業間の国際競争も激化しています。企業は長期的なスパンで物事を考えられなくなるかもしれない。

即戦力が求められる時代なのです。となると、正社員とは名ばかりで、「安泰」といえるほど保護が十分ではない正社員が増え、従来型の正社員は減っていくでしょう。正社員になることは悪くないんだけれども、そのなかでどうやったら生き延びていけるのかというのが問題です。


わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より

――でも学生の間では「正社員になる」という風潮がまだ根強いです。
 
昔はサラリーマンとして働くよりも、自営として独立で働くほうが普通の時代でした。それが徐々に雇用で働くことはいいと価値観が転換していきました。そもそも雇用の本質とは、自らの労働力を企業にゆだね、その指揮命令に従って働くこと、そして、その働いた時間に対して報酬が支払われることです。正社員となれば長期雇用ですから、企業もしっかりと育成をします。

一方で、請負は働いた仕事の結果に対して報酬が支払われます。自由だけど自己責任の世界です。従属しているけれど、終身雇用や労働法による保護など安定している雇用の方がいいと考えられても不思議ではありません。
 
しかし、会社が突然倒産したり、業績が悪くなってしまったりしたらどうするのか。今の時代、30年後もいまの企業が存続していると思うのは相当楽観的です。高度経済成長期のような何もしなくても、流れにのっておけば幸せになれるという時代はあったけれど、それは歴史的に見てみるとごく例外的な時期だったのかもしれない。高度経済成長モデルで出来ている終身雇用や年功序列型賃金は、特別なことだという意識を持たなくてはなりません。

本当にいまの若者が幸せになるために必要なことはなんだろう、という問題定義をしてほしいですね。企業や社会がどんなスキルや技能をニーズしているかを先を見越して見極めることが大事で、そしてそのニーズは今後も変わっていくのです。


先40年を見据えたときに企業や社会が人に何を求めるか


――どのように変化を捉えていけばよいのでしょうか?
 
産業社会がどう変わっていくかを意識することでしょう。今は技術の進展がすさまじいですよね。アメリカの論文によると、技術革新やIT、人工知能の発達により、2025年には今ある仕事は半分になると言われています。自動運転車が増えるとタクシー運転手は失業するなど、人間の仕事はロボットに代替されてしまう時代がくるわけです。

つまり企業からしてみたら、十年かけて育て上げた一人前の技能が使えなくなるかもしれないということです。企業は人を育て上げるよりも、いまある程度貢献できる人を市場から連れてくる志向に変わるでしょう。
 
他方で、技術革新は技術やITを使った新しい仕事が出てくるということも意味しています。技術を扱うのは人間なので、倫理はますます大事になってくるでしょうね。今までは大切だと言いながらも役に立たないと言われてきたものが、実は今後は大事になる。価値がどんどん変わっていくのです。仕事が変わっていくので、仕事の数自体が全く減るわけではないでしょうけど、従来型の仕事は減るでしょうね。これはかなり確実なことです。それがいまの大学生だと、現役バリバリのときに起こるわけですよ。IT社会のなかで自分がどんな仕事ができるのかが鍵になります。


わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より

――生き延びるためのポイントとは?
 
こうした雇用社会やIT社会のなかで生き延びていくには、「プロ」になることです。特定の職種で専門性を磨くことで、企業において不可欠な人材になったり、他社からヘッドハンティングされるような労働者になることです。いわば「転職力」ですね。
 
そのために大事なのは、産業界が求める汎用的なスキルを身につけることです。ある企業でどんなに高く評価されていたとしても、他企業で評価されなくては「転職力」は高まりません。さらに、誰でもやれるような仕事であれば、プロにはなれない。需要と供給の話で、働く側の供給が多ければ、よほど多くの需要がないかぎり、競争は激しいわけです。
 
将来どういう仕事にニーズがあるかということを見極めて、自分の適性とすりあわせて、自分なりのライフプランをたてていくことが重要です。いま現在、需要のある仕事をみているだけでは不十分で、今後四十年くらい先のことまで考えておく必要があります。実際、難しいんだけれども、戦略として「自分はどういう職種で、プロとしてやっていくのか」という意識をもたなくてはなりません。人生の目標を正社員になるというところにしない。そこから長い先があるんです。


わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より
▲著書『君の働き方に未来はあるか? 労働法の限界と、これからの雇用社会』では、正社員安泰説に警鐘をならし、
未来ある働き方の指針を示す



自分で何かをする楽しみ。知的な喜びは人間本来持っている


――会社に入ると、職種も業種も決まります。専門性を獲得しているように見えるけど、そうではない。「自分はこれができる」というのを持つことが大事で、それを持てたら心強いです。

 「自分で何かやる」というのは、人間やはり楽しいものです。そういった知的な喜びは人間本来が持っているものだと思います。ただ、雇用における過酷な労働のなかで、なかなか自分の持っているものを発揮するというのは容易ではありません。だからこそ、「いい人に会う」というのが大切です。三十年、四十年の世界で、自分の力だけで何かできるということはまずないんです。

じゃあ、どうやったら会えるのか。それは運もありますけども、マイナスオーラを出さないことです。腐っている人間には、腐っている人間しか寄ってこない。自分がなにかいいオーラを出していると、いい人が気付いてくれるはずです。

――社会における自分の市場価値をどう高めるか。その意識が明るい働き方につながるんですね(了)



わたしが働きたいと思う理由〜『ワークの掟』より



▷『ワークの掟』制作協力

■一般社団法人ワークルール
2014年4月1日設立。
大学生、専門・専修学校生、高校生などの若者に対し、社会で働く上で必要な、ワークルールの基礎、多様な働き方の情報を身につける機会を提供している。また、労働法がわかりやすく解説した冊子『知っておきたい ワークルールの基礎知識』(通称:青い本)は現在静岡県版と全国版が発行され、キャリア支援関係者の他、大学・高校生のあいだで好評を得ている。
Webサイト→ http://www.workrule.jp




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