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ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

ハタチの社会見学(3)
■細田漆工所にやってきた!!
〜歴史ある漆器を、この目で知りたい!〜

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

静岡県の漆器がだんだんと有名になりつつあるのを知っていますか?
今、漆器を含めた静岡県の伝統工芸作品は地域ブランド化され、海を越えフランスなどで注目を浴びています。しかし、そんな漆器がどのように作られているのかを知らない方も多いのではないでしょうか? 今回は漆器職人である細田豊さんに、漆器を作る工程を教えてもらいました。細田さんは漆を塗るだけではなく、漆を塗る前の木地から作っています。地域ブランドとして認定された伝統工芸品のひとつである漆器を、私たちとともに学んでいきましょう!


◉静岡県の伝統工芸品〈静岡県庁〉
https://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-560/dentou_itiran.html

[取材]静岡大学3年/度會由貴
[取材・文]静岡英和学院大学2年/漆畑友紀


■他の器にはない魅力が、漆器にはある。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

職人によっては塗ることを専門にしている人もいますが、私の場合は木地作りから漆塗りまで一貫して行っています。漆の最大の利点は、他の器類と比べ抗菌作用があることです。時代が変わり、技術の進歩で食べ物が季節問わず新鮮で美味しく食べられるようになってきましたが、昔の人の知恵や自然の力でも、食べ物を美味しい状態に保てるんです。

また、昔から重箱に漆が使われるのは、漆の木からでる樹液(生漆)をものに塗って乾燥させると丈夫で長持ちするからなんですよ。そして、近年、建築などに輸入木材を大量に使用していることよって、地元の木の循環が乱れていますが、漆器作りで地元の木を使うことは、本来あるべき木の循環に戻してやる効果もあります。

こういった漆器の良さを若い世代に語り継いでいきたいのですが、作り手がいなければ意味がありません。今、漆器作りに携わりたがる人は少なくなってきていますが、情熱があれば誰だって始められます。漆器は実用品なので、自分が手間をかけて作ったものが不多くの方に使ってもらえるんです。実は価値や結果などがすぐに実感できるものなんじゃないかと私は思っています。地元の素材を使って作ったものを、地元の人たちが買ってくれて、それで美味しいご飯を食べてもらえると、職人としてやりがいを感じますね。


◉細田豊(ほそだゆたか)さん
漆職人。15歳で漆器の道に進み、お弁当箱や重箱など食器類も作っている。「思ったようにはなかなかいかないけれど、作ったものは裏切らないよ」という言葉が印象的で、この仕事にかける情熱を感じました。

住所:静岡県静岡市葵区田町4‐39
TEL:054-253-6044



ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

(1)社会見学スタート!
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲こちらが漆を塗る前の漆器の木地です。漆器の製造工程では、漆を塗る前の地肌のままの器物を【木地】と呼びます。まずは、どのように木地が作られるかを見てみましょう!



(2)木地の木材は檜
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲工所の裏には、木地を作る際に使われる木材(檜)がたくさん置かれていました! 軽くて丈夫な性質を持った檜は、漆器製造と相性がよいため、よく使われるそうです。



(3)木地づくり1
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲木材は、やすりで削り板状にしたあと、沸騰したお湯にいれ柔らかくします。



(4)木地づくり2
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲柔らかくさせた板を、あらかじめ電のこで切りとっておいた楕円形の型に沿って曲げていきます。板が熱をもっているうちにやらないと、整った木地ができません。時間との勝負です。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲電のこで切りとった型。
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲私たちも体験させてもらいました。型にまっすぐ沿わせるのが、とにかく難しかった……!



(5)型の固定
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲曲げた板は、強力な輪ゴムでしっかりと固定します。曲げわっぱ(※)のお弁当箱の骨組みが完成しました。
※江戸時代に、武士の内職として推奨されたことが始まりとされる。スギやヒノキで作られた、円筒形の木製の箱。ご飯が傷みにくく、軽量で持ち運びがしやすいため実用品として重宝されてきた。



(6)糊づくり
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲うるち米を加工した上新粉をお湯で煮込んで糊にします。細田さんは昔からこの糊に生漆を混ぜています。漆の匂いが部屋中に広がりました。



(7)漆づくり
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲米粉と生漆(不純物を取り除いた精製途中の漆)を混ぜ合わせます。漆は、空気に触れると黒くなる性質があり、乾いた漆はとても丈夫になります。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲糊と漆を混ぜる時に使っているヘラは、細田さんお手製のもの。檜で作られていますが、実は、以外と重い。



(8)下地づくり
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲下地とは、漆器の光沢や仕上がりを上質にするために木地に施すものです。また、下地を繰り返すほど、上質なものになるそうです。細田さんが使っている下地の材料は、研之粉という京都の山でとれる土。水で濡らして使います。



(9)木地を整える
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲木地を底にはめます。漆をムラなく塗るため、木地の表面を削ったりやすりをかけたりして整えていきます。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲こちらは鉋をかけているところ。蓋をはめた部分を斜めに削ることで、漆を塗りやすくします。



(10)顔料
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲漆に色をつけるために使われる顔料です。



(11)摺漆
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲木地に生漆を刷り込むようにして塗る工程を、摺漆(すりうるし)といい、塗ったあとは乾燥させます。塗る回数を重ねることで、次第に色が濃くなり艶がでてきます。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲漆を塗る際に使う刷毛です。毛の部分は、なんと女性の本物の髪の毛! 中国人の髪の毛を輸入して使っているそうな……。

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲丁寧に塗り重ねると、光沢も艶もある、見事な朱色に変わります。


ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
漆器に模様を描く際、何が使われているのかご存知でしょうか?下の写真の漆器には「螺鈿」という技法が使われていて、あわびの貝で描かれています。市販の1mmにも満たされないほど薄くスライスしてあるあわびの貝をカッターなどで切り、木漆で塗り終わった木地へ模様を付けたい所へ置きます。漆はすぐに乾かないので、あわびの貝は段々と漆に潜っていきます。しっかり乾くと、とれることはありません。あわびの貝の他にも夜光貝や白蝶貝、黒蝶貝などが工芸品などで多く使われています。



(12)完成
ハタチの社会見学〜細田漆工所〜
▲漆を塗った漆器は、約3〜4ヶ月かけて乾かします。天気に左右され、雨が降ると湿度があがって漆の乾燥が早くなります。湿度や気圧に苦労しながら漆器は完成し、買い手の方へ渡っていきます。


■見学を終えて……

ハタチの社会見学〜細田漆工所〜

「静岡の漆器の魅力を知りたい」という想いで臨んだ今回の社会見学。細田さんの仕事場に入ると、小学生の頃伝統工芸作品作りを体験することができる駿府匠宿へ行ったあの日を思い出す懐かしい匂いがしました。取材時に細田さんから頂いた漆器のお弁当箱で食べるご飯は暖かく、漆塗りの技法「摺り漆」がとても綺麗で魅せられました。静岡の地域ブランドとして、注目されている漆器。これからも静岡の伝統工芸作品として多くの方に知ってもらいたいと思いました。春からまた始まる学生生活を細田さんから頂いたお弁当箱と共に日々精進して行きたいと思います!
[取材・文/漆畑友紀]


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